連日、クマ関連のニュースが流れています。
今年の4月以降、11月19日時点で全国のクマによる死傷者が224人。
その中で死者13人と、過去最悪のクマ被害とのことです。

ここ数年は、人を恐れない「アーバンベア」というクマが増えており、
柿の実や米を求めて頻繁に人里に出没しています。
車のクラクションを鳴らしても逃げないのだそうです。
クマ出没のせいで、私は趣味である登山に出かけるのを控えていました。
また、紅葉を楽しみに山へドライブすることさえ億劫になりました。
せっかく秋を楽しみしていたのに、残念でなりません。

【写真】2015年7月 石転び沢雪渓
クマと言えば、私も登山中に1度だけクマと遭遇したことがあります。
2016年9月、飯豊連峰の北股岳を目指し、石転び沢を遡行していた時です。
山形県小国町を登山口とする「石転び沢ルート」。
通常は、沢を埋め尽くす雪渓が残る「春から初夏」の時期に登ります。
涼風が吹き抜ける大雪渓を登る、実に爽快なルートです。
ですが、当時私が登った9月にはすでに雪渓は消え、沢登りとなりました。
この時期に登山者は誰もおらず、ヤブ漕ぎに悪戦苦闘しながら進みました。
歩き始めて5時間、「黒滝」という滝を越えようと岩をよじ登っていたときです。
20m先の頭上の岩で、何か黒い毛のかたまりのようなものが一瞬のうちに踵を返し、
「ガサガサ」とかなりのスピードで右斜面のヤブの中へと去って行きました。
瞬時に私は「クマだ…」と悟りましたが、萎縮してしまって体は動かず、
その場にしばらくのあいだ、立ち尽くしてしまいました。
単独行でしたので、なお一層の恐怖を感じました。
その場にじっとして、ときどきクマ鈴を鳴らしたり「オーイ」と声を
あげたりしながら、15分ほど立ち往生して事無きを得ました。
いまとなっては、あれは貴重な体験だったと思います。
クマのニュースを見るたびに、あの時の記憶が蘇ります。
